百合

レディ・プレイヤー1の百合のレビュー・感想・評価

レディ・プレイヤー1(2018年製作の映画)
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おれはガンダムで行く。

いや、脚本はたしかに雑だし(読み取るとするなら)メッセージも説教臭い圧倒的正しさでしかなく、映像的快感は3Dという新機軸でボカされ、ひたすらに80年代ポップカルチャーや‘オタクの勝利’みたいな視点から論じられていますが。なんというか。
わたしはなんというか‘虚構への愛’をひたすらに感じてよかったです。いや引用で成り立たせるその構造もですが、なによりも終盤のセリフ「おれはガンダムで行く。」が最高でした。
前の夏にも取りざたされた‘虚構と現実’という感覚は、なんとなくみんな共通してあるのだと思います。冒頭のヒロインとの会話からしてそうですが膨大な過去の蓄積に埋もれてその中で息をして会話することが、必ずしも誤ったことではないと思うのですよ。虚構と現実は敵対関係ではない。
通常通りパロディを行うのならば森崎さんのセリフも異なったものになったはずです。そこをあえて「ガンダムで」行くと言わせる意識。ここにこの現実と虚構の融和点のようなものを見ました。つまり‘虚構(ガンダム)’の中で言われる‘肉体を伴った表明(「アムロ行きます」)’がそれとして生きている人間に力を与える。そして彼は‘虚構’を救うために‘虚構’の力を借りるわけですが、そこには一種の切実さがあります。
このように虚構と現実は入り混じり、新しい世界が出来ていくのだと思います。
スピルバーグがつくったあの世界でも、オアシスに参加せずにすみっこで暮らすいじけた人々がいるはずです(かつての‘オタク’達のような)。彼らはその時のリアルな生きづらさを感じて、なにかを作っていく。それはいつかオアシスのように世界の主流となり、多くの生きづらかった人たちを救ってゆく。このようにポップ/サブカルチャーは回転して醸成してきたし、これからもゆくのでしょう。そのような冷静で、しかし深いカルチャーというものへの愛情が感じられて、とてもよかったです。
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