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バービーのkakakaのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
4.3
バービーの擬人化によるガールズエンパーメント、根強い男性優位社会における女性の出世を阻害する透明な天井の可視化、それからケンの自尊心の獲得と回復という着地は想定内だが、グレタ監督はさらにその先を描いて見せた。
バービーの姿を通して、いわゆる人間世界(現実)での女性における自己実現の難しさを描いているが、バービーが生みの親と対話するラストで「人間になるために、誰かの許可は無くてもいいの?」という問いがささった。これってつまり女でも男でも、その間であっても、そもそも自分が自分であることに誰かの許可を得る必要などない、という自己肯定の基本を言っている。
さらに巧いのは、バービーが初めて人間界にきた時、何を見て美しいと言ったか。それはベンチに座り、風に揺れ陽光きらめく木々の葉と、人生を生きてきた老婦人を見た時だ。
そしてそれを思い出すようにラストでバービーが生まれ変わる時、リフレインして目蓋の裏に描き出されるのは、揺らめく木々の葉、子ども達の笑顔と営み。
バービーの生みの親が言ったように、自分が何処まで歩いてきたか、振り返って思い出させてくれる、そんな郷愁を誘うラストとビリーアイリッシュの「What Was I Made For?」に思わず涙を絞り取られた。
フェミ論のみに終始することなく、根源的な命の誕生ときらめきに着地して見せ、普遍的な瞬間を描いて見せたのは見事。
しかしエンディングでバリキャリの一歩を描くと思いきや、まずは婦人科に行くという外しは、男性フィルターでは描けない、流石女性監督ならではだと予定調和を外して見せるのも良いですね。
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