るな子

アイリッシュマンのるな子のレビュー・感想・評価

アイリッシュマン(2019年製作の映画)
4.1
中でも好きなものを挙げると、主人公の半生・並々ならぬ人間関係・時代背景(歴史)と裏で暗躍していたマフィアたちの政界との癒着…です。
それらを息が詰まるほど深く暗く描いています。物語が静かな水面のようなテンションで3時間半も進んでいくにも関わらず、面白いです。

歴史に関してはあまり明るくないのですが、登場人物の台詞や話の流れから想像が出来る構成になっていました。説明的な描写はありませんが、見てて感じられるということは脚本や演出、俳優さんたちの演技が優れているんだと思います。(本来は登場人物のプロフィールなどある程度知っているのが前提での鑑賞をする作品の気がします。)
こういったことをきっかけに歴史について調べて読んだりすると楽しいな、と普段から感じます。後から「あれはこうだったからこうなんだ…。」という事情が分かったりするのが好きです。

人間関係は、実際にいた人物がベースになっている為、よりリアルに捉えてしまい胸が痛かったです。特に主人公とその娘の冷えた関係は辛いものがありました。最後になればなるほどもう見てられない、という気持ちが強くなります。そこに至るまでの彼の公私の人間関係もなかなか…辛いです。辛いものに辛いものが重なりどうしようもなく辛いです。

そして、そんな主人公の半生を描いたラスト。今まで機械のように言われるがまま仕事をこなしてきた彼が初めて民族性だったりを見せた姿は最早痛ましいです。虚無って何だろう、と自分自身の存在について考え崩壊してしまいそうです。しかし、彼のやってきたことを考えると自業自得なんですよね…。

そんな余韻のある終わり方に寂しさを増幅させられました。物語の途中のシーンを意識していたと思うのですが…悲しさまで増してきますね。
別のシーンですが、出会いと終盤とでの対比の表現なんかも個人的には好きでした。

3時間半、楽しく鑑賞させていただきました。
アメリカの戦後(特に50〜70年代)とマフィアが好きな方にオススメしたいです。
るな子

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