かくたす

あの頃エッフェル塔の下でのかくたすのレビュー・感想・評価

あの頃エッフェル塔の下で(2015年製作の映画)
3.1
監督はエステルがアイデンティティを確立している田舎の娘、ポールをアイデンティティの獲得に至っておらず、都会へ出た文学青年と対照的な立場として置いていると語っていたが、本当にそうなのかと疑問に思った。エステルは田舎に埋没し、両親の仕事を手伝う傍らで自分の生き方に確信を持てず、悲嘆にくれて一夜の愛を求めてさ迷っている。唯一一途に自分を思ってくれるポールはパリにおり、自身の道を進むそんなポールにエステルは置いていかれたように感じていたのだろう。初恋は相手を通し自分を見ているという。はじめポールは自由奔放に振る舞うエステルに恋をし彼女を神格化するまでに至るが、パリに出て勉学の道を見いだすうちに、彼女をどこかつまらない存在のように思ってしまう。相手を己のアイデンティティの写し鏡にすると、時が経ったときにそれは必要のないものへと変化してしまう。青年期の恋の難しさはそこにあるのだろう。
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