MikiMickle

マイケル・ムーアの世界侵略のススメのMikiMickleのレビュー・感想・評価

3.8
多大な軍事費を使い、侵略戦争を続けているアメリカ。しかし、第二次世界大戦以来、勝てていない。石油も手にいれていない。悩んだアメリカ国防総省の幹部らは、なんと、マイケルムーアに依頼し、代わりに侵略してもらう‼‼ …という設定、


様々な国を訪れて、ムーアはその国の良いところを侵略(獲得)していきます。

例えば、
イタリア。なんと、有給が一年間に8週間もある。
プラス 結婚したらハネムーン休暇。もちろん育児休暇も。
昼休みになったら、社員は家に帰り、のんびりと家族そろって2時間のランチタイムをとる。
この事実は知っていたけど、まさかアメリカに育児休暇がないなんて‼
そして、労働者を酷使するアメリカよりも生産率が高い‼

フィンランドは、ずっとアメリカと低い教育レベルを争ってきた。宿題をしないという変革を行ってから、今や学力トップ‼ そして、バイリンガルの生徒だらけ。

フランスの給食はフレンチフルコース‼ゆったりとした時間をとって、自分たちで給士したり。そこでマナーを学び、食についても学ぶ。でも、給食費はアメリカよりも低い‼

ノルウェーは、囚人に死刑はなく、牢屋は島の優雅な一軒屋‼しかもナイフももってる。
重犯罪者の牢獄もかなり自由。
なのに、再犯率は最も少ない。

今作で唯一のイスラム国家チュニジアは、中絶費用がただで、スカーフの着用も自由。

アイスランドは世界初の民選の女性大統領。

ポルトガルは麻薬規制が一切ない。
しかし、中毒者は激減‼


そういったたくさんの世界の驚くべき事実を、なぜそうなったのか、なぜそう出来るのか、なぜそれでいいのか、そして、それによりどんな効果があるのかを、ムーアが紐といていきます。

知らなかった事がたくさん。
様々な各国の話を聞いて唖然とするムーアが可愛いのです♪
そして、それぞれに対して、アメリカの現状を比較していきます。
こう見ると、アメリカってなんて国なんだと、逆にこっちが唖然としてしまう。
アメリカ史を学び、彼の映画や本も全部見たから、少しだけはわかっているつもりでも、知らない事実がいっぱいあって、かなり勉強になります‼
囚人がビクトリアズシークレットの女性下着を作ってたり‼

なぜ黒人の多いはずの南部が、共和党ばかりのレッドステイトと呼ばれるのかもしっかりと説明していました。それは、囚人には選挙権が与えられないからなんです。人種差別の根強い南部。白人では見逃されるような罪でも逮捕されます。故に黒人の投票率が少ない。数多くいる黒人の3分の1が投票率をもっていない。
映画では、述べてなかったけど、キリスト教原理主義者の多い南部の、その彼らの投票率は高いのです。故に、共和党の州になる。

そして、看守にボコボコにされる黒人囚人の映像をみると、やはり涙が止まりません……胸が苦しくなる……

しかし、この映画のひとつの本質は、そこだけではなく、ムーア作品全てにも言える事ですが、彼がどれほど愛国心をもって、アメリカ国民を愛しているかという事なのです。
この映画では、それらの海外の良い所は、元々アメリカ発祥だったと伝えています。その根本的本質を、アメリカは忘れている。もともとあったはずなのに、それらの事は、アメリカが世界に伝えたのに、アメリカは自由の先駆者なのに、全て忘れている。利益と驕りのために。と、それを訴えている作品です。
正直なところ、イタリアにしてもポルトガルにしても他の国にしても、それ以外の問題はかならあります。経済破綻とか色々。しかし、ムーアは今回はそこに着目せず、良いところばかりを追いました。完璧な国家などありません。でも、それぞれに素晴らしい所があるのです。

そして、一番の本質である各国の政策。目から鱗の事が色々ありましたが、人が人として生きる事、子供が子供らしく生きること、人を許すこと、自国の過ちを認める事、 尊厳や自由や生きる力や活力や権利や本質をどれほど大事にしているのかに、あまりにすばらしすぎて涙がでてしまいました。
ものすごく希望に満ち溢れている作品でした。

しかし、マイケル・ムーア、丸くなったなぁ。なりすぎってくらい丸い…。毒とブラックユーモアがほぼない。ちょっと寂しいな……あの際どい毒々しさの中に垣間見れる愛が良かったんだけど…… ユーモアはもちろんあるけどね♪
で、体格はさらに丸くなってた(笑) ちょっと、ムーアさん、フランスに移住して、痩せた方がいいよ
MikiMickle

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