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ストーンウォールのnobuoのレビュー・感想・評価

ストーンウォール(2015年製作の映画)
3.5
「パトリオット」に始まる実録歴史系エメリッヒ映画シリーズ? ゲイを公言しているエメリッヒが真っ向からゲイ解放運動を描くのだから、良作エメ映画になっているのでは...?と期待したが、残念ながらそう上手くはいかなかった。

多くの評論家が指摘しているように、作中でストーンウォール反乱のきっかけを起こした主人公(架空の人物)の描き方が、映画の問題点の多くを担っているように思える。
“架空の白人青年”を主人公に据えた事により主にホワイトウォッシュ的な意味で叩かれたようだが、問題の本質はそこではないように思える。仮に主人公が黒人であろうと黄色人種であろうと擬人化された動物(ズートピア的に)であろうと、映画の出来は変わらなかっただろう。
この主人公、最初から最後まで痴話喧嘩をするか場に流されているばかりで、事件を起こし結末に至っても何の成長もみられない。“ストーンウォール反乱を起こす”という物語の目的の為に、事務的に動かされたようにしか感じられない。

架空の人物を主人公にしたなら、そこに当事者性を持たせず傍観者に徹しさせ、彼の目から見た解放運動とその関係者の裏側を描くことに徹するべきであったように思える。実在の活動家達の姿も描かれる割には“とりあえず出しただけ”感が滲み出ている...。

エメリッヒ映画の特徴として、よく宇多丸氏が“事務的”“無神経”の二点を挙げて語っている。マイノリティの苦悩に関しては間違いなく描けていたため、本作からは無神経さを感じることはなかった。しかし残念ながら、エメリッヒ印の“事務的”感は拭えない一本であったのではないか。
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