重めのテーマですが映画の雰囲気としてはそこまでどんよりしていないのが印象的です。
「罪の意識」として、ドキッとさせる警察の使い方やビニールハウスのシーンなど、ストーリー上で外すことのできない要素を思わず笑ってしまうユーモアを交えながら展開させる見せ方がとても上手く、映画のトーンを重くなりすぎないように絶妙に保たせていたと思います。また認知症の進行を疑わせる演出も孫の存在によって、より深刻さを感じさせてくれます。
愛しているからこそ、死を選択するという考え方の正当性を問うことで、生きることとはどういうことなのか?苦しみながら生きていくことが自分にとって、周りの人にとって幸せなことなのかという簡単に答えを出せないテーマをこの映画では上手に取り上げていたと思います。しかし、ラスト付近の展開で一番難しい選択を迫られる場面での主人公の苦悩や葛藤が物足りず、最後の選択への動機づけが弱いなと思いました。認知症という設定ならなおさら丁寧に描くべきではないのかなと思いました。