半兵衛

恐喝の半兵衛のレビュー・感想・評価

恐喝(1963年製作の映画)
4.2
上昇志向が強すぎて出過ぎた真似をしてしまいどんどん所属している組からも社会からも追い詰められる組員健さんのどうしようもないアウトローっぷりが堪能できるヤクザ映画、主人公が己れの欲望のまま駆けずり回りみっともなく破滅していく様はフォロワーの言うとおり『灰とダイヤモンド』のようで、あるいは『鉄砲玉の美学』、『ブラック・シーザー』、『スカーフェイス』の先駆けとも言うべきか。

後年のイメージとは180度違う小悪党なチンピラを飄々と演じる高倉健の好演もさることながら、ドライな親分山形勲やいかにも凶悪で狡猾なヤクザの佐藤慶(東映任侠映画に出演しているのが珍しい)がシビアなドラマを見事に締める。そして善人・加藤嘉の完璧すぎる死に様。

シャープに主人公の破滅を切り取っていく渡辺祐介監督の演出も冴えており、無駄のないスピーディーな語り口も相まって一気呵成にラストまでお客の目を釘付けにする。そして監督が新東宝出身のためか石井輝男同様ヤクザのスタイルが野暮ではなくモダンチック。映画のサイズを生かした広角ショットを効果的に使用した撮影もドラマを盛り上げ、特に東京のビルがバックにある高架道路のショットが決まっている。

終盤の採石場での死闘からの結末も不様な主人公に似合っていた、そしてこのあと任侠映画で刀をかっこよく(でもちょっと独特な)振るっていた健さんの必死に刀で暴れる姿のみっともなさがかなりのインパクト。

でもいかにも付け足したようなラストはやはり要らないな。

ちなみに若い頃の川合伸旺がヤクザ役で出演しているが、後年の時代劇での悪役時同様優しい素顔を隠すため目元をバッチリメイクしていた。
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