櫨山

黒崎くんの言いなりになんてならないの櫨山のレビュー・感想・評価

3.5
思っていたほど悪くはなかった。
序盤三十分は小松菜奈がイケメン二人に壁ドンされたり顎クイされたりと辛い展開が続くが、まあ需要を考えればここに文句を言ってもしょうがない。

この映画はただ単に“胸キュン”な恋愛を描いているのではなく、他者との関係性の中で「対等である」ということを男女の恋愛、男同士の友情、そして女同士の友情を使って描いていた。
物語は圧倒的な“俺様キャラ”である黒崎くんを中心に展開していく。
そんな黒崎くんを巡る人々がそれぞれの手段で彼と対等であろうとするのがこの物語だ。
だからこそのこの映画のタイトルは「黒崎くんの言いなりになんてならない」なのだ。これは中島健人に迫られた小松菜奈の薄っぺらい嬌声ではなく、しっかりとしたこの作品のテーマなのだ。
誰にでも解る高圧さで人を見下す黒崎。優しい一面もある彼が、無意識で本当に見下していたものとは……そしてそれに自覚的になった時、彼は言う。
「そんなこと言わせんな」
そして自分もまた誰かの下で足掻く葛藤を抱えていたことを吐露する。

一人の少年が誰かを無自覚に見下し、そして自分も誰かの高圧の下にいるということを受け止める……そんな少年に恋する少女もまた、恋愛を通して飾った自分ではなくありのままで人と対等に接するということを学んでいく。

そんな二人の恋がこれから対等なものになっていくことを、最後の顎クイ逆転劇は示唆している。

つまるところ、ナルシズムにまみれて全能感に浸っている男子高校生には誰かが「お前の言いなりにはならない!」と言ってやらなければならないのだ。
櫨山

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