RyotaKondo

ザ・サンドのRyotaKondoのレビュー・感想・評価

ザ・サンド(2015年製作の映画)
3.3
映画を撮りましょう。
お金はあんまりありません。
有名な役者もちょっと呼べないです。
CGはクオリティを求めなければ使えないこともないかな。
撮影期間的に移動したりとかはできないからワンシチュエーションがいい。
でかいセットを組んだりカーアクションとか爆発とかも無理です。
でも面白いエンタメ映画で、ちゃんと人が死んだりするハラハラするやつでお願いします。


困ったことに映画作りはこんな無理難題をぶつける人たちの何気ない要求からスタートする。
馬鹿野郎、こんな予算で良質なエンタメが作れるわけねぇだろ。
と、諦めてしまう手もあるけど、まぁここは一つ頭を使ってみようか、という人たちの手でどうやらジャンル映画というのはその可能性を少しずつ広げていった。

そんなわけで、『ザ・サンド』は制限だらけの状態で、「砂が人を襲う」という極めてシンプルなワンアイデアで、エンタメとしての水準を最低限クリアしていく、そういう綱渡りの映画になっている。

そりゃあ、『遊星からの物体X』や『ザ・グリード』と比べたら目も当てられないだろう。
だけど、「砂に触れたら即死」という設定を思いついた時点である程度目的を達成したような感じがあって、観ているとよくこんな材料だけで成立させたな、と口元が緩んでしまうようなところがあって、みてくれの派手さはなくても、娯楽をやってやるという矜持さえ失わなければ、ちゃんとある程度面白い映画にはなるのだ。

顔のアップばかりで、予算がないとはいえ状況がわかりづらい撮影と編集で決して映画的な快楽に満ちた作品とは言いづらいけども、娯楽であることが正義であるアメリカ映画の底意地が垣間見えて、正直結構好きな一本だった。
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