とにかく言葉ではうまく言えませんが、イーサン.ホークの表情、しぐさ、眼差し、すべてが魅力的。
二度とトランペットを吹くことは出来ない、と言われてもあきらめずにと言うかそれしか出来ないとでも言うようにずっとトランペットを吹き続ける演技が目に焼き付いています。
1929年、チェット.ベイカーは、オクラホマ州のイェール、あまりにも広大な荒野の一軒家で生まれ、育ちます、しかも一人息子。
恋人が「こんなところで一人っ子なんてさみしかったでしょ?」と聞くのですが
「いや、トランペットとラジオがあったから。」と言います。
トランペットと共に生きてきて、もう体の一部、そしてトランペットを吹くことしか出来ない、麻薬を打つことはそれを失う事でもあるのにやめられない。
始まりの場面で、〈バードランド〉でマイルスデイビスを前に演奏し、彼から「甘いキャンディのような演奏だ、もう一度やり直すんだな。」と酷評されたことが脳裏から離れない
ずっとコンプレックスにさいなまれるチェット.ベイカー、
この時代ジャズはどちらかと言えば黒人の音楽と言われていました。
ライブ演奏は一度きり失敗が許されない世界でコンプレックスを抱えながら演奏することの苦しさ、しかし、麻薬をやると音がすべて自分自身になるような気がして音が広がっていき素晴らしい音を奏でられるような気持ちになる、わずかな時間でも苦痛からの解放がある。
その魔力にあらがう事が出来なかったのですね。
ラスト、再起をかけたニューヨーク〈バードランド〉での演奏のシーンからすっとエンドロールに入っていくところが何とも言えず良いです。
エンドロールで流れるジャズ、ずっとその世界に浸っていたい、と思いました。