個人的に言うと、脱出物でもなく、再会でお涙頂戴物でもなく、人生のリスタート・再生の物語と見ています。
脱出物でしたらクライマックスは脱出シーンでしょうし、お涙ちょうだい物だったら脱出後の親や友人たちとの再会でしょう。
普通はそうなりがちなのに、この作品は脱出後の部分にかなりの分量を割いています。
何年も監禁されて行方不明、青春時代を奪われたあげく子供もいる、親や知り合いは死んだと思っていた、デリカシーのないメディア…など、監禁時も地獄ですが、その後もかなりキツイ状況が待ち受けています。
脱出→再会→ハッピーエンド、なわけがなく、彼女と子供にはそれ以降の人生が待ち受けているわけです。
ぽっかりと空いた時間という穴、それを苦しみながらもゆっくりとしっかりと埋めていこうとする主人公と子供、それを戸惑いながらも支えようとする周囲。
奪われた時間は戻ってこないし、すぐに乗り越えられるわけではないのですが、少しずつ少しずつ回復する過程を見届ける、そういう見方をすると、最後は暖かい気持ちになれると思います。