貧しい家に生まれた。
周りも貧しかった。
町が貧しかった。
悪さに慣れ、やがて板についた。
何回も捕まった。
ときには死ぬほど殴られた。
女ができて、すぐにガキができた。
大しておれには似ていなかったが、可愛いやつだ。
自分が少しマシな人間に思えた。
親らしいことをしなくたってガキは育つ。
いろんな物が必要になる。
まともな仕事をしなくちゃと思った。
あちこち回ったが、誰も相手にしてくれなかった。
刑期を終えた、罪はつぐなったと訴えても、だからなんだという目でおれを見た。
昔やったことがいつまでもいつまでもつきまとう。
マシな奴に思えた自分はどこにもいなかった。
また手を染めるしかないかと思っていた頃に、声をかけられた。
殴って、相手を負かせたら、お前の勝ち。
チンケな路上のケンカじゃなく、興行だ。
チケットを売って客を呼ぶし、動画をネットにも流す。
そうしてプロの格闘家になったやつがいる。
頭の後ろと金たまは殴るなよ。
あとはどこを殴ってもいい。
ただし終わったら相手を称えろ。
それが決まりだ。
やるかと聞かれてやると答えた。
そうしてこれが始まった。