Kachi

メッセージのKachiのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
4.4
【リベラルな世界観を描いた良作】

原題は"Arrival"。謎の「殻」が地球に「到着」したこと、そしてこの物語の主人公であるIanが、地球外生命体のメッセージの意味に「たどり着いた」ことが掛かっている。

現在の国際政治の文脈で見ると、本作の世界観は冷戦期のそれと似ている。旧西側(米国)と旧東側(中国・ロシア)の緊張関係が常にある。

ただ、冷戦期と大きく違うのは米ソ間ではなく米中間が二極を担っていること、そして、好戦的に見える中国に対し、米国は戦争回避に向かおうと努力していることだ。

これを弱いアメリカと見る向きもあるだろうが、アメリカの交渉の末に、世界の国々を1つに纏め上げようとする「世界の盟主としてのアメリカの復権」と捉えることもできよう。

「Language is the foundation of civilization. It is the glue that holds a people together. It is the first weapon drawn in a conflict.
言語は文明の基盤であり、人々を結びつける潤滑油のような役割を果たし、対立を防ぐための最初の武器である。」(意訳)

未来と現在の関係も、実に緻密に描かれていた。時間を行き来する物語は、私の好きな設定であるだけに、スコアを自ずと上げざるを得なかった。
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