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ピアニストを撃てのiyoのレビュー・感想・評価

ピアニストを撃て(1960年製作の映画)
3.8
なんか全部巻き込まれてるというか、巻き込んでいるというか不幸の死神のような主人公シャルリ。保身に走ってるといえるのかもしれないけど、もう何を選んだってという諦めしか感じないし、この人は愛してくれた人を失う運命なのか?不思議と同情はしないけど、野心のない生き方が私は好き。臆病者と呼べるような良いものでもなく、ただこの人は淡々とピアノを弾くことしかできない性を感じた。他のことはてんでダメみたいな。

カメラにだけ内心を打ち明け、どこか垢抜けない小心者が、人生のすべてを諦めているようにも映ってそこはすごくよかった。
共感できてしまったところが多い。悪党の兄を持って、関係ないのに巻き込まれ、いつの日か天才と呼ばれ手にした名声は妻が身体を売った恩恵かもしれず、行く末自分には名もない酒場のピアニストがお似合いだと退廃的になるのも、酒場の店主もクズだし、不幸が自分について回るという感覚、そしてそれを振り解けない宿命のようなもの。全部めんどくさそうに映って、変な自虐も哀愁もなくていいなあと思った。自分の血を呪う感じも、運命論的な感じすごく好き。


(ギャングのお母さんの命をかけるシーン、意外とお気に入りである。)
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