kikinama

葛城事件のkikinamaのレビュー・感想・評価

葛城事件(2016年製作の映画)
3.9
みんなそれぞれ少しずつずれていて、少しずつ弱かっただけだと思う。

父親の描いた理想像は、少しのずれと、少しの弱さで、それはそれはかけ離れたものとなった。
自分を立派な人間だと信じている父親の自分では気付けなかった弱さ。

中華屋での文句も、一般的に大声でのあの類は疎まれるし、それをわかっている人は、人目を気にして大声で文句を付けたりしない。
けれど、この父親は、疑っていないのだ、自分自身を。
ある意味真っ直ぐな人間だと思った。

だからと言って、同情はしないし、肯定もしない、これは只々、各々が受け入れるべき現実だ。
そしてみんな全員 悪 だ。
法を犯すことだけが悪ではないから。

人を変えるのも、人に変えられるのも、きっと単純で容易い。
少しずつ、少しずつ、促してやればいい。
それが、故意か、無意識か、その違いでしかない。

死にきれない、無様な父親、それでいいじゃない。
店先で家族写真を眺める父親、情けなくて、泣けてくる。
「俺が一体、何をした」その通り。
父親だけの問題ではなく、促していたのが、父親だったってだけで、この家族は狂ってるわけじゃない。


何故だか、最初から最後まで、胸糞悪くなることもなく、不快感を感じることもなく、静かな感覚で観れた映画でした。(只、終始痛かったけれど)
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