生まれた瞬間から適正や性格、病気、寿命まで全てが数値で割り出され、それが死ぬまで覆らない世界。ガンダムのあるシリーズでも似たような設定があったし、将来遺伝子操作が簡単に行われる可能性は無きにしも非ずなのかと、誰にもわからない未来がふと怖くなった。怖がっても仕方のないことなのに。近未来だけど、それだけリアルな世界観だったという証拠だね。
ヴィンセントはこの世界のシステムの抜け道を掻い潜って適正者として宇宙飛行士を目指していた訳だけど、能力だけは彼の地道な努力が生み出したものだから、先天的な知能の高さが無いとしても、努力を積み重ねて自分の潜在能力や本来の力を育てることって本当に美しくて力強いことだと思った。
最初は怪我で適正者としての栄光の人生を失ったジェロームが不適正者のヴィンセントに協力したところでメリットはないのにどうしてと思ったけど、自分は適正者なのに一番になれなかったからこそ、自分の夢も含めてヴィンセントに全てを託したし、彼の夢も自分の全てをもって支えたんだろうな。最後ジェロームは夢をもらったと言い、ヴィンセントも地球を去るのがつらかったと語った。これこそが彼らの契約で結ばれただけの関係だけじゃない、奇妙な友情や信頼の形の結果なんだと思ったら感動と切なさと、いろんな感情がごちゃ混ぜになって涙が止まらなかった。最後のジェロームの、どこか誇らしく満足そうなあの顔がずっと忘れられない。
