福福吉吉

ガタカの福福吉吉のレビュー・感想・評価

ガタカ(1997年製作の映画)
4.0
遺伝子操作と人工授精で選び抜かれた優秀な遺伝子を持つ人間が優遇される世界で、自然出産で生まれたビンセントは「不適正者」として低級な仕事しか認められなかった。宇宙飛行士に憧れるビンセントは「適正者」で事故で足が不自由になったジェロームになりすまし、夢を叶えようとする。

◆感想◆
遺伝子操作による出産が当たり前になった近未来で、遺伝子操作されていない男が夢を叶えるために優秀な遺伝子を持つ他者になりすますストーリーであり、遺伝子レベルでの差別が合法的に行われる世界でその差別に抗う主人公を応援したくなりました。

本作で描かれている世界が独特かつ現実感のあるものになっていて、不適正者を除外するために血液や尿、指紋など容易に調べられる恐ろしい世界でした。遺伝子レベルで合否を決められる世界では努力や希望という言葉が酷くむなしく感じられました。

ビンセント(イーサン・ホーク)は自然出産で生まれ、生まれつき心臓が弱いですが、宇宙飛行士への憧れを抱き、努力を重ねます。弟のアントンは遺伝子操作で生まれており、その差を感じながら生きるビンセントの歯がゆさは想像を超えると思います。それでも夢を捨てられず、適正者のジェローム(ジュード・ロウ)になりすます手段に出たビンセントを非難する気にはなれませんでした。

ジェロームの血液や尿などを使ってなりすましてビンセントが宇宙局「ガタカ」に入るのですが、これが常にバレる危険性のある中でガタカでビンセントが行動する姿は緊張感があって面白かったです。様々な検査をやり過ごす手法も手が込んでいて観ていて楽しかったです。

後半になると、ガタカの内部で殺人事件が発生したことでビンセントが警察に疑われるようになります。「適正者」の検査はさらに厳しくなり、ビンセントはジェロームの協力のもと、綱渡りの状態で切り抜けていき、そのスリリングな展開が楽しかったです。

ラストはとても切なくて人の価値は遺伝子で決められるものでないことを感じました。

近未来の独自の世界観とその中で必死に夢を叶えようとする男の真摯な姿がとても良くて、面白かったです。

鑑賞日:2024年1月28日
鑑賞方法:BS松竹東急
(録画日:2023年12月2日)
福福吉吉

福福吉吉