昨年の東京国際映画祭で作品賞を受賞した渡辺紘文監督作品『プールサイドマン』の公開記念として、新宿武蔵野館で1週間限定で公開された未公開作品。
北関東の農村で高齢の祖母と二人で暮らす牛飼いの男の“何も起こらない7日間の生活”を描いた映画である。
そう書くとそんな何も起こらない映画のどこが面白いんだと、言う人がいると思うのだが、これが実に刺激的で面白かった。
というよりも、観賞後、数日経って、この映画のイメージが幾度も自分の生活に反射してくるような感覚があった。
働いている時、食事をしている時、風呂に入っている時、就寝する時…
面白い映画や完成度の高い映画は世の中にいくらでもあるが、心と身体に刻み付けられるような映画はなかなか無い。
この映画は、そんな不思議な映画である。
多くの人にこの映画を観てほしいが、残念ながら上映期間は終わってしまっている。
何処かの心ある映画館が再びこの小さな映画を上映してくれる日が来ることを静かに望む。