ひれんじゃく

シャイラクのひれんじゃくのレビュー・感想・評価

シャイラク(2015年製作の映画)
4.2
なるほど。なるほど。
スパイク・リーらしさがものすごく出ててニヤニヤしながら観てしまった。前半と後半の落差こそ凄いがメッセージは一貫していてブレることがない。銃を捨てよう。殺し合うのはやめよう。愛を持って生きよう。ブラッククランズマンの次に好きかもしれない。

リシストラタをはじめとする女性たちの勇姿に感動が止まらなかった。自身のみならず全体への利益をもたらす理念のために行動できる人間の素晴らしさ。

ただしこれはテーマ上仕方がないのかもしれないが男性の描き方がやや気になった。「固定的な女性観(女はヒステリックで感情的である、など)」があるのなら「固定的な男性観」もまたあるのだ、とこの映画は教えてくれる。男はひたすらに性欲に突き動かされる、暴力的な存在である。それをひどく誇大化して強調しているところが少し合わないな、と個人的には思った。セックス対決とかもその骨頂という印象。スパイク・リーの厳しい男性観を強い女性と対比的にコメディと皮肉増しましに表現したのだろうが、見方によっては貶めているようにも思える。私にはそう見えてしまった。
だが非常に難しい問題ではあると思う。両方の性を固定的な観点から描かないということは。性の平等とはかくも難しいことなのだ、とこの映画を観ながら考えざるを得なかった。

時々出てくるナレーターのサミュエル・L・ジャクソンもオシャレでひょうきんでとても良かった。お気に入り。彼のみならず登場人物が度々カメラの方を真っ直ぐに見て語りかけてくるのもスパイク・リーらしくてすごく良かった。他ならぬ画面の前のお前に話してるんだぞ、他人事じゃいられないんだ。こっちの目を見て話を聞かざるを得ないだろ?という感じ。これは映画であるだのフィクションが入ってるだのとは関係なく、そして回りくどいことは一切せずこの映画・そして監督の伝えたいことが画面を突き通してこっちに届く印象がする。その強さがまたいい。

この映画を観て説教くさいだの意識高いだのと嫌う人もいるかもしれない。だが、世界に問題が転がっている限り「口やかましい」作品はなくならない。それこそ、カメラの奥から真っ直ぐにこちらを見てくる登場人物たちと目を合わせて話を聞き、危機感を持たない限り。そのように嫌うのは勝手だが、問題を避けて見ないフリをするのはやめるべきではないのか。個人的にはそう思う。説教くさい、意識高いという言葉が使われずとも済むような世界は、いつ来るのだろうか。
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