ぶらいとん

マジカル・ガールのぶらいとんのレビュー・感想・評価

マジカル・ガール(2014年製作の映画)
5.0
父が白血病で余命わずかの娘を喜ばせるために頑張る映画、かと思いきやしっかりしたフィルムノワール。何を見せるか見せないかはっきりしている。殺されるシーンなど肝心のシーンは描かない。『黒蜥蜴』の部屋や検索サイトRanpoなど江戸川乱歩へのオマージュ作品であり、超アート系映画。
 
あえて画面に描かないものがあったり、セリフもかなり少ないので、登場人物の関係性やこのシーンの意味、時系列もしばらく見ないとどういう意味かわからなかった。ちょっと難解な気がする。
 
プリキュアみたいな魔法少女モノではない。12歳の魔法使いになりたい少女と、本物の魔女(魔性の女)バルバラが出てくる点で、魔法少女&魔女モノトいえる。ド級ノワールなのに、まどか☆マギカが表に出ていて、ポップな芸術作品。
 
ダミアンがジグゾーパズルの最後の1ピースが、序盤中の序盤に出てきていたとは…!ルイスの頭に落ちてきていた…。伏線がさりげなく映っているので、細かく見ていないと見つからない。
 
ファムファタル・バルバラからは逃げられない。ファムファタルが出てくるノワールはやはり最高。
「見方を変えようと思っても真実は変わらない」冒頭のダミアンが教室で言っていた通りの結末。
 
魔法が使えるとしたらどうしたい?と娘から質問。
父ルイスは「透明になる。触れられなくなる」と答える。娘は「なんにでも変身したい」。バルバラが夫に見捨てられた後、鏡にがりっと頭を突っ込んで流血しながら向こうの世界に行こうとする描写。
これらの表現は観客の存在を指している。透明人間でなんにでもなれるが意味するものは、私たちで、そこに気づくとギクッとする。

(↓ネタバレあり)
教室でバルバラに心を掴まれ、狂わされてきたダミアン。殺すときに、後ろを向け!と言うのは直視できないから。後ろを向かず、まっすぐにピストルを持つ自分を凝視するアリシア。アリシアの魔女っぷりがこれでわかる。彼女も生きていたら、バルバラのようになったのだろう。いや、死んでもなおダミアンを苦しめ続けることができるかもしれない。

バルバラにされたように仕返しをしていたが、結局バルバラが狂わせる側、ダミアンが狂わされる側という構造は変わらないのではないか?と思う。