afterballet

リップヴァンウィンクルの花嫁のafterballetのレビュー・感想・評価

4.8
繊細な人間描写に心酔。ファンタジーなのに現実を映し、観入ってる間は美しい瞬間を感じるようにできているのに
観終わってとことん考えを巡れるようになってる。
刹那主義も永遠も持ち合わせた空気が正解の無い現代を肯定も否定もしない、そんな3時間。
意味深なセリフやメタファーされた名前の響きも小説を読んでるかのよう。

流されてるナナミに共感してしまう人がいるんだとしたら自己投影し問いかけ続ける物語でもあり、単純にこのおとぎ話のような世界を現実に味わってるかのような感覚体験ができる面白さもあり、結末を期待するようなミステリーかと思いきやそうでもなく、
短編小説を読み終えた時の感じに似ているような美学。

Coccoと黒木華。岩井俊二の中にこんな少女がいると思うと男性的な目線など感じられない不思議さと(花とアリスもそうだし)ヒステリックだけど素朴な友情関係がいつも羨ましくも幸福に描かれていて、この癒しが理想的な人には幸せな気持ちになれる。
安室の大げさに泣く行動、白い被り物の意味、リップヴァンウィンクルとは。いろんな人が深掘り交えた感想。
余韻が消えなかったのは暗いトーンが続くのにただ辛く悲しくなるわけでもなく日常が愛おしく思えたから。
個々が同期する方向とその虚しさの現れが痛いほど表現し尽くされて、これ以上に求められる表現なんて浮かばないとすら思った。
ウエディングドレスを見ると二人を思い出してしまう。
そのシーンを脳裏に、
結婚もお金のやり取りも、密かに自分が疑問を抱いていることにまで嘘をあらわにして
何かを完全に信じることの愚かさを醸し出しながら嘘の中で生きる事が美しいことか。
真白の言う壊れるという表現が最初は分からなかった。抑えきれない心境を言葉に提示され、その感覚に触れられる。あるようでなかなか出会えていなかった。
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