RyunosukeAkita

ファニア歌いなさいのRyunosukeAkitaのレビュー・感想・評価

ファニア歌いなさい(1980年製作の映画)
4.2
戦場と音楽シリーズ第二弾「ファニア歌いなさい」。強烈な作品でした。

強制収容所という生き地獄の中で、信じることをやめず、人を思い、人間らしく在ろうとするファニアの強い生き様に心打たれました。自分が死にそうな時に、人のために行動することはできるんだろうか。先行きが真っ暗でも、希望を持ち続けることはできるんだろうか。そんなことを考えさせてくれる作品です。こんな現代じゃなかなか気付きませんが、希望を持つことは、強いことですね。

無駄な音楽は一切流れません。ファニアと収容所のオーケストラが奏でる音楽、そして髪の毛を切り落とされるときのハサミの音や、銃声、飛行機の音、悲鳴。無音の演出により、そこに響くリアルな音が生々しく突き刺さります。

人々の表情も抜かりなく捉えていて、特に、ファニア達が収容所の宿舎に到着した時の、それよりも前に宿舎に来ていたユダヤの人々の顔が鮮烈でした。薄暗い宿舎、泥で汚れた顔に、不自然なほどギラつく目が、希望ない生活の過酷さを全て物語っていました。

この映画の中でファニアが、僕の大好きな蝶々夫人の中で出てくるアリア「ある晴れた日に」を歌うのですが、絶望に瀕しても決して希望を失わないというシチュエーションがマッチして、とても心に響きました。
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