spacegomi

君の名は。のspacegomiのレビュー・感想・評価

君の名は。(2016年製作の映画)
2.2
絵はまあ綺麗だし、セカイ系をこれほどのポップさをもってして提示する手腕には素直に感嘆せざるを得ないが、個人的な好みの問題でいうとかなりキツイ作品だった。

1点目。男女の入れ替わりモノのくせに人間の身体を軽視しすぎていて気に入らない。物語を進めるのに都合のいいハコでしかない。身体とジェンダーのズレがもたらす問題や葛藤の大方をおっぱいに引き受けさせる新海の選択がどうにも。。
2点目。わりと明らかに震災を意識させときながら、ばっさりと過去をなかったことにする。観客がそれぞれにもつ固有の記憶はセカイ系という物語構造に奉仕する説話の一道具に成り下がる。さすがに無邪気すぎるしちょっと気持ち悪い。
想い人のためだけに悲劇をいとも容易く無かったことにしてしまう、盲目的な無邪気さ、そこで生まれ得る葛藤をばっさり切り捨てる潔さってのは、セカイ系、メロドラマどちらの文脈でみても特異なんじゃないかなあ。普通の説話であればまず見せ場とするであろう父親の説得シーンを削除したために奇妙な空白が生じている。ある意味過激な作品だなと思うが、それがうまい具合に作用してるともあまり思わない。
前半徹底されていた保守的なジェンダー観は、身体のズレや代替不可能性を意識させる入れ替わりをもってして打ち破られるものだろうと期待して見ていたら、まあ、何事もなく終わってしまってちょっと拍子抜けした。まあ、単純の見たいものが違ったんだなという話なんだけれども。

作品の持つ危うさや過激さの文脈から褒めてる文が読みたい。
spacegomi

spacegomi