りく

君の名は。のりくのレビュー・感想・評価

君の名は。(2016年製作の映画)
3.3
映画は昔と違って、新しいものじゃなくなってしまった。
物語があって、演じる人がいて、流れる音楽がある。それだけで感動した時代だってある。
今の時代、耳や目は肥え、膨大な知識や情報が蔓延する中で、満足を与える映画ってなんだろうなぁってずっと考えてきた。
答えじゃないかもしれないけど、ヒントがこの「君の名は。」に詰まってる気がした。

新海誠の芸術的背景の世界観・田中将賀の瑞々しいキャラクター・RADWIMPSのやり切れない想いを肯定する音楽。それらを劇場の大きなスクリーンで浴びることが出来たのは凄く気持ち良かったし、登場人物が抱える葛藤というか、至極ストレートな人との繋がりっていうテーマは、帰り道に自分に何度も言い聞かせるには持って来いだ。


でも、多くの人たちを喜ばせたい映画が辿り着くべきゴールはここじゃ無い。
凄く表面の上澄みを掬ったような内容だし、感情が揺さぶられるようなシーンはほとんど無かった。

それでもここまで圧倒的な構成力で、エンターテイメントのど真ん中を突かれたら否定しようが無い。物凄い力を感じた映画だった。
これは多分、映画が今後目指す希望の一角になるんだろうなぁ。


でも瀧くんには、飛騨に一人で行って欲しかったなぁ。
なんだか予定調和的なストーリー展開に少しガッカリした。「言の葉の庭」とか、「雲の向こう、約束の場所」のような、ストーリーに恋をするようなラブストーリーが、僕の好きな新海誠作品だからこそ。

登場人物が恋に落ちる瞬間をもっと描いて欲しかったし、言わせたようなクサいセリフが作品の為じゃなくて、観る側の為に用意されていたのがちょっと過失的演出だったかなぁ。
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