あろわ

海よりもまだ深くのあろわのレビュー・感想・評価

海よりもまだ深く(2016年製作の映画)
4.1
阿部寛演じる主人公は、過去に一度受賞歴はあるものの今は探偵事務所で物語の“ネタ集め”をしながら生計を立てている小説家。
離婚した元妻の新しい恋人が気になってデートのあとをつけちゃう。実家に帰っては棚を漁り金目の物があれば質屋に持ってっちゃう。
仕事でも、事務所には内緒で不倫の証拠をお金で買い取らせたり、子どもからも買収したり、それで得たお金をギャンブルにつぎ込んだり・・
不器用で人間味があり(?)、映画として観るにはいいけどリアルでは絶対結婚したくないタイプ。笑

養育費の支払いや最近子どもが始めた野球道具を買ってあげるために正等とはいえない方法でお金を作るのも、見方によっては健気?
でも元妻が発する「月に一度の父親ごっこでよく言うわねそんなこと」という言葉が結局全てを物語っている。
毎日傍で子どもの成長をみられるのは幸せだけど、働きながら一人で子どもを育てるストレスや重圧に耐えている元妻からしたら・・
この映画でも大切なものは失って初めて気付くっていうのがテーマになってると思うけど、日々のしかかってくる大変なことから開放されたからこそ大切なものがよくみえる、っていうのもある気がするな。

あと心に残ったのは、阿部寛が事務所の女の子に、女性の恋愛は上書き保存で新しい恋愛を始めたら前の人のことなんて忘れちゃうんだろって聞いたときに、その子が「恋愛は水彩画じゃなくて油絵だ、みえないけどココ(心)にちゃんと残ってる」って返した言葉(ニュアンス)。
よく女性の恋愛は上書き保存~て言われるけどずっと違和感あって、この言葉聞いてたしかにそれだわって共感した。わざわざ別フォルダに保管して覗きにはいかないけど、消去しちゃうわけでもないよね。

散々あれがイヤこれもイヤて書いたけど、映画としてはとても良かった。
樹木希林のおばあちゃんとても感じが出てる。リリーフランキーの責め方まじ怖かった。
みんな、人間として素敵な部分、足りない部分、ちょっと困った部分が、とてもきちんと表現された、素敵な作品でした。
あろわ

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