かっぱ

映画 聲の形のかっぱのレビュー・感想・評価

映画 聲の形(2016年製作の映画)
4.3
伝わらないこと。伝えたいこと。

小学生の頃、ある出来事をきっかけに会えなくなってしまった聾唖の少女、硝子と高校生になった主人公将也が再会する。

序盤、小学生の頃、二人が初めて出会った頃。硝子が将也の学校に6年生で転校してくる。
子供というのは残酷で、実際、社会の縮図であるように思う。この映画でもやはりそれは如実で、怖くなるほどに子供達は残酷だ。
自分たちと違う、ということは何か恐ろしいものだと感じるのだろう。
また、会場で感じたことだが、この場面で私たち観客の認識の違いというのが浮き彫りになる。

京都アニメーションは人物の描写が非常にうまい制作会社だと思う。人物の仕草、表情に加え、そのセリフにも妙にリアリティがあって、嫌な役回りの人物には相応の嫌悪感を抱く。

高校生になった主人公が出会う他人はみんなバッテンが顔に張り付いている。そしてそのバッテンは常に揺れ続けている。主人公の心情を描写する演出として素晴らしいと感じた。

主人公をビッグフレンドと言って憚らない、気の弱い少年永束くんは重いテーマを抱える本作において、救いのような存在でコミカルな役回りである。

本作ではヒロイン硝子を中心としたシーンで手話が用いられるが、彼女の言葉には一切の字幕はつかず、将也が作中において通訳としての役割を果たす。
この演出が本作において最も重要な部分であるように感じた。
伝えることと、伝わらないこと。伝えたいのに、伝わってくれないこと。
観客の私たちがわからないということ。

本作はいちいちリアルで、現実逃避には向かない作品かもしれない。しかし、だからこそ観るべき作品なのだろうとも思う。
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