矢口

映画 聲の形の矢口のレビュー・感想・評価

映画 聲の形(2016年製作の映画)
4.0
アニメでしっかりと撮っているものを初めて見たかもしれない。そもそもアニメで撮っていると表現することはおかしい。カメラもフレームの外も存在しない。だからいつもアニメを見るときはフレームなんて意識しないし、映画とは別の映像として見ていたように思う。しかし、このアニメはフレームで語ろうとしている。その点でしっかりと撮れている、つまり映画的だと思った。同じ場で同じ行動が反復される描写など、映画的操作が多く見られる。

それもそのはずで、タイトルは聲の形。見えないものに形を与えようとする作品である。映画は地続きに広がっている世界を一部切り取る、フレーミングすることによってある世界の形を撮そうとするものである。

そもそも、主人公が難聴の子に設定されていないことも特徴の1つである。この映画は、見えない側から見えないものを見ようとする姿勢で作られている。

見えないものにいかにして形を与えることができるのか。冒頭のシャーペンの芯が机の上に影を落とす描写や、川の水面、文化祭の床、などは見えないものへの眼差しだったように思える。前述した、フレームを意識的に作ることも、なんとかその場に形を与える操作だった。
映画的なアニメ。不意をつかれた。

正直、過激なストーリーなどに作品としての共感は持てないが、学童の教材、売れる映画としてはこれくらいの方が良いのかもしれない。形を作る操作に集中してほしいというのは単なる私のわがままだし。にしても優秀で優等だな。
矢口

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