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ヘルムート・ニュートンのmillikのレビュー・感想・評価

ヘルムート・ニュートン(1989年製作の映画)
3.3
今は亡き写真家ヘルムート・ニュートンのバリバリ現役時代を目にできるドキュメンタリー。彼が作品において、被写体になる人間(おもに女性)から、支配力に似た「強さ」を引き出したい人というのがよくわかった。その点で、ランプリングやドヌーヴやラガーフェルドのような個性が強烈な人ならそのまま撮ってよさそうだけど、この映画の中で、ヘルムートが女性ファッションモデルとの撮影中に「目が優しすぎる。それだけは気をつけて」「君の表情からは一番重要なガッツが感じられない」と演出をつけていく様子が見られる。1980年代に、女性を強く見せて撮るというのは、ある意味ではエンパワーメントともいえるけれど(当時のフェミニズムは、ヌード作品が多いという点で彼の作品を批判したが)、今振り返るとそれは暗に弱肉強食をよしとするメッセージにもなりかねない。個人的には、彼が残した数々の倒錯的で美しい写真はとても好きだけど、アナクロニックな表現ではあるなと思った。
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