このレビューはネタバレを含みます
最高の娯楽映画だと思う。大好き。
途中からもしかして?あ、やっぱり?となり始めて、ひっどい話なのに最後までゲラゲラ笑いながら観てしまった。
予算がついてやりたいことを詰め込めたのかな。
サイテーな父親と悪い彼氏だなぁ。格差社会的なことも若干映してはいる?母娘は従順過ぎで、女性観がステレオタイプ。
『岸辺の旅』『蛇の道』『サスペリア』を足して割った感じ。
正統派ヨーロッパのゴシックホラー映画を観たぞ!な手応えを感じると同時に、笑えてしかたがない。
扉の開き方に風、温室の雰囲気とカーテンが、これぞ黒沢清でフランス映画だった。固定具のビジュアルもやばい。フランス人の撮った作品だったらもっと絶賛されてそう。
手元に毒物があるんだから自殺ならそれ飲みなよと思ったけど、たぶん監督がピストルも出したかったのと巻き添えを増やす用に必要だったのかしら。
最後は貯水池から発見される流れかと思った。空中浮遊させるとどうしても作り物感が出てしまうので、池でドロドロの布だけ見えるのがいいと思うけどな。
ダゲレオタイプの印象まで悪くなっちゃいそうだけど、通常の製作者は普通サイズで無理なく撮ってるはずなんで、誤解されませんように。
たまに美術館で見るダゲレオタイプは、とにかく物質として美しいです。
https://youtu.be/amwEirUaHn0
死んだ赤ん坊の等身大遺影を撮る場面、最初遺体と分からず、赤ちゃんにそんなに照明炊いてええんかい?と思って眺めてたら、棺に納められたので、あぁそうかと思った。
死者の尊厳への冒涜だという娘の言葉は、複製を作っている点では正しいような気もする。かけがえのなさと喪失への阻害。
影山光洋も戦時中に病死した息子の死に際を撮って、彼の妻はその写真だけは怒ってずっと見なかったという。
悼む以外の作業を死の瞬間にやってしまう、死に圧倒されていないことの悪さ。
わたしもたぶん家族の死は撮ってしまうだろう。
撮ることがなぜ責められ、なぜそれでも撮ってしまうのか、こうやって言葉に出来なくはないけど、どちらも言葉を超えた生理的衝動が含まれる。
さすがに、一服盛ってまで何かを撮ろうとは思えませんが。
等身大で撮るのがあの父親のこだわりポイントで、ということは、あまりに生き写しのコピーを創ってしまったら本体が亡くなる、というホラーなのかもしれない。