ダゲレオタイプの女の作品情報・感想・評価

「ダゲレオタイプの女」に投稿された感想・評価

朝田

朝田の感想・評価

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2010年代の黒沢作品で何故か唯一見逃していたので観賞。フランスに行っても気負うことはなく、基本的にはいつもと同じように映画を撮っている事に驚かされる。風に揺れる透明なカーテン、怪しげな機械、廃墟、カットを切り返した瞬間にいきなり立っている幽霊、ワンカットで曖昧になる生と死の境界線、全てを淡々と受け入れていく主人公。そうしたディテールからして、どこを切っても純度100%の黒沢清が楽しめる。段々コンスタンス・ルソーが「LOFT」の中谷美紀、あるいは前田敦子、と黒沢作品のミューズたちに見えてくる始末。ただ、フランスで撮る事でどことなくゴシックホラーとしての耽美さが増している。そこは普段の黒沢清とは少し違うかもしれない。是枝監督なんかも同様なのだが、日本人の監督がフランスで映画を撮る!となるとついはしゃいでパリの街を撮りたがってしまいそうな所を、ほとんど密室劇として仕上げている所に作家としての知性を感じる。過去「新しい靴を買わなくちゃ」だの「エロティックな関係」だの日本人がパリの町並みを撮ろうとした結果、全く垢抜けて見えずハリボテのように見えてしまうという歴史がある事を踏まえて撮っているのではないか。そうなると舞台の面白さが重要になってくる訳だがそこは黒沢清。ロケ選びが非常に秀逸で、古びたドアや階段がただそこにあるだけで怖い。前半のゴシックホラー的な展開から、後半は「回路」のようにアメリカ映画的な男女のロードムービーが導入される。即席の結婚式を教会で行う、というまんまニコラス・レイ「夜の人々」オマージュが入ってニヤリとさせられる。という訳でテン年代の清の中でもかなり楽しんだ作品。なのだが、やっぱりどうにも尺が長い。電車に乗っているシーンとか明らかに要らないカットだし、もっと省略して欲しかった所。90年代の清であれば120分以下に納められる話なのではないか。これは今作に限らず最近の黒沢清作品全般に言える事だけど。
a

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4.2
好きなタイプの映画だとおもったら監督が日本人だった、あと建物から小物までが素晴らしかった、ヒロインの表情が絶妙
Uzurakoh

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2.3
設定とタイトルと、キャスティングがこの映画のピーク。前半と後半の演出の落差がどうも違和感。描きたいこと、やりたいこと、使いたい人ががあり過ぎた感、拭えず。

面白かったですかと言われたらいや別に…という感じだけど
印象強いというかジワ〜と焼き付いてるシーンはわりとあって、なんか本当全然わかってないパッパラパーうすらサブカルもどきでも雰囲気さえ楽しめたら許してもらえる(?)、ソフトでジメッとしたホラー

車のシーン、静かに大胆で好きだな〜となったけど
やっぱ監督の専売特許?的な手法なんですね
osaka

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4.1
「ダゲレオタイプ」という名の銀板写真の存在は耳にしたことがあるが実物を見たのは初めてで、まずそれに感動してしまった(カメラを挟んでいるが・・)。エジプトのミイラなんかも人間の身体的外見を固定し、存在を時間的流れから引き離すことで生をこの世につなぎとめようとしていたが、ニエプスが初めて写真撮影に成功してからはリアリズムが加速し(つまり生きるためには肖像画で事足りる)、かつてそこにあった魔術的な力が削がれてしまったように思える。といっても本で読んだ程度の知識で実際にミイラを見たことがあるわけではないのだが、志は同じなのにそこにははっきりと違いがあるのは分かる。それならダゲレオタイプの一体どこに感動したのか(いやこれも実物を見たわけではないのだが)。それは露光時間の異様な長さにより、「この世ならざるものが映ってしまった感覚」があるからだ。詰まるところ全くリアルじゃない。いやリアルなんだけどリアルじゃない(笑)実時間にして2時間くらいシャッター開きっぱなしで、そこに流れた時間がそのまま一枚の銀板に凝縮されている。2時間という長さといい、まあこれは映画と同じなわけです。そしてまさしく黒沢清的なわけです。これは良い映画に違いない。
黒沢清といえばスクリーンプロセスを使用した車のシーンが印象的だが本作の車シーンは他作品と比べてもかなり好きな方。スクリーンプロセスを派手に使っているわけではない(もしかして使ってないかも)が、車に乗ると場所が変わり状況が変わり、そして人も変わってしまうかもしれない・・そのことの表現としても良かったです。そして象徴的に現れる身体固定具ですが、あれも父親にしばられている娘というのを表現するのにこの上なく良いですよね。ところで娘の黒目がまるで揺れ動く心を表わすかのように、ずっと小刻みに左右へ震えていたのは意図的な演出なのでしょうか。あんな凄技できる人いるんだ。もしかしたら「ジェイコブスラダー」をやりたかったのかもしれないけど。これを見てやはり「降霊」で役所広司の目がインスマンスみたく目尻の方へぐいーっと離れていったのは思い過ごしではなかった!と確信できた。良い映画でしたよ。
ネット

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3.3
ふつう。なぜかわからないが、すごく表面的な映画に感じた。みんな生きてる感じがしなくて、ただ物語の駒のように見える。

男が死体を抱え上げるとき、死体の方の手が男の背中をグッと支えるのよね。こういう嘘を見ると「いま映画見てる!」という気分になる。
夕食を食べて、男が美味しいと言うだけのシーンは『クリーピー』を思い出す。風、カーテン、勝手に開くドア、揺れる電球、ここの食事シーンといい、記号の作家になりつつある印象。
固定器具のメタファーとしての女の背中のファスナー。
温室とか、ドレスの女性ロングショットとか『回転』そのまま。そこに『花子さん』をプラスする。ビニールカーテン越しのシルエット、ちゃんとまあまあ怖い。
唐突な老婆のシーンが一番良い。闇を凝視するシーンも。あと、視点が定まらないコンスタンス・ルソーの眼球。
N

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冒頭主人公が歩くシーンから、フランスだけど黒沢清だな、と

呪われた屋敷もの だけど
体を固定する器具が怖い
壁の陰影が怖い
屋敷の所々置かれた鏡が怖い
マリーの焦点の合わない目線が怖い
ダゲレオタイプという写真の撮影方法が怖い(2時間!)

階段落ちをしっかり見せる
近づいてくる幽霊はボケてて
スローモーションで
これは回路っぽい

死が2人を別たなかった
「居心地の悪さ」「薄気味悪さ」、こういう直接的でない不快感を与えてくれる映画は貴重で、流石。

こういう現実と非現実の曖昧さは、恐ろしさと優しさを同居させた不思議な感覚。

オチは古典的なので、多分多くの人が悟るんだろうけど、オチが途中で分かるとつまらなくなるような映画でもない。
ash

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PFFにて鑑賞。真綿で首を絞められるような怖さに冷や汗かいた...黒沢清監督が終演後にトークショーでいらっしゃってパリでの撮影のこと、主演タハール・ラヒムのこと、故吉武美智子プロデューサーとの思い出をお話しされてた。タハールはアラブ系フランス人なので、くるオファーの多くが移民だったりテロリストの役なのに少しうんざりしていた。黒沢清監督はこの映画で「普通のフランス人青年」の役を彼に頼んだのでそれが嬉しかったと。本当はイギリスで撮る予定だったけど色々変わったらしい。監督は飄々としていて軽やかさを感じさせる方で、洒脱だった。
階段から落ちるシーンの見せ方トリックについてお話されていた気がするのだけど肝心の内容を忘れた。
榊實

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3.5
黒沢清感もJホラー感もバリバリで良かったけど、ダゲレオタイプという撮影技法がストーリーに全く絡んでこなくて、撮りたかっただけかよと思ったが、黒沢清なら仕方ない。
終わり方はもっと怖くももっとイヤーな感じにも撮れたと思うんだけど、あのはっきりしない締め方がこの映画では正解な気がする。終始不穏で、謎は謎のまま放り投げられ、観客の心にある種不快なしこりをこびりついたように残す映画だった。
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