だいき

スイス・アーミー・マンのだいきのレビュー・感想・評価

スイス・アーミー・マン(2016年製作の映画)
4.2
2017年公開映画93本目。

無人島に何か1つだけ持って行くとしたら?

この不朽の名問にようやく答えが出た。
死体。
いや、正確には「ダニエル・ラドクリフの死体」。
こんなに便利で万能な死体が嘗てあっただろうか。
男性が観ても引くぐらい下ネタを使っているし、一歩間違えれば完全なギャグ映画になっていたところを、見事なまでに人間ドラマに昇華させた。

人間は人前では上品に見せようとする。
格好をつけたい時に下ネタなんて論外だ。
そんなの人生ではない。
生きていく上で必要不可欠な生理現象こそ生きている実感であり、性に対しての悦びなのだ。
つまり、下ネタは命を語ることと同義である。
非難されようが気持ち悪がられようが関係ない、誰に何と言われようと自分を貫き通す覚悟が持てたのなら何処でだって生きていける。
二人の友情と健全なる放屁がそれを教えてくれた。

生きているのに死んでいる者。
死んでいるのに生きている者。
二人は全く対極の存在だが、恐らく互いに「もう一人の自分」として繋がっているのだろう。
死体だけど死体に見えない、寧ろ誰よりも生きている死体を演じたダニエル・ラドクリフには称賛を送りたい。
冒頭と結末では印象が180°変わり、何から何まで奇想天外でぶっ飛んだストーリーと下ネタに勇気を与えられる。
オープニングのタイトルクレジットが出るまででも1800円以上の価値はある、最高で不思議な映画体験だった。
だいき

だいき