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パターソンのallisroundのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
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一日一日の繰り返しが愛おしい。小さな自分の領域で生きるためには不満もぐっと飲みこみ、不穏の種は摘み、獲得したものより多くを望まずにそれを慈しんで過ごすパターソン。平凡ゆえにひとつ返答を過てばすぐにでも瓦解してしまいそうな彼の世界の潜在的な危うさが、ピリピリとした緊張感を含みつつ描かれていてよかった。その日常は所与のものではなく、日々の営みのなかに獲得しているものなのである。
毎夜なじみのバー通い、だけれどいつも飲み残されている気の抜けたビールのショット。妻が作り変えていく家のインテリアや壁面の、ぎりぎりのところまで侵されていく彼の世界が視覚的に示されるショット。

住人たちの誰もが詩、文学に寛容でありどこかゆったりとした空気が流れるパターソンの街もいい。深夜のコインランドリーをスタジオにライムを作り出している黒人男性、生成を目の当たりにするパターソンとマーヴィン。
小さな奇跡を織り交ぜているのも、街の雰囲気と相まって撮りたい映像、僕たちが見たい映像を作っているんだ、と感じられた。理想を理想のまま観られることへの喜び。

永瀬さんの使いかたについては触れないでおく。
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