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桜の代紋のIMAOのレビュー・感想・評価

桜の代紋(1973年製作の映画)
4.0
永らく観たいと思っていた『桜の代紋』をDVDにて購入。
1973年の東宝作品だが、勝プロ製作なのでほとんどのキャスト&スタッフが大映の人たちである。大映が潰れかけていたところに座頭市のTVシリーズなどを製作していた勝プロ(勝新太郎)が、大映のスタッフで製作した作品を東宝で配給、という流れはこの作品より少し前の『子連れ狼』と同じ。

若山富三郎演じる刑事の奥村は拳銃の密輸事件を捜査している。主犯の西神会の若頭の杉山(石橋蓮司)の行方を追う内に、腐敗しつつある警察内部の事情を知ることになるが…
演出は三隅研次。この人は大映のスター監督で『座頭市』シリーズや『眠狂四郎』シリーズ、そしてあの『大魔神』シリーズ等で名作を生んだが、どんな作品も見事な画作りでまとめる。「ナメ」と言って手前にものを被せながら奥に人物や対象を配置させる構図の撮り方や、鏡の使い方などは本当に見事。蓮實重彦は三隅研次のことを「耽美派」と称したがそれも納得である。(ただしそこには半分褒め言葉、半分は批判的な意味合いが含まれていると思うが)
撮影は森田富士郎。この人には生前インタビューをしたことがあるが、三隅研次は構図には相当なこだわりがあって「私も随分と勉強になった」と仰っていたのが印象深い。
しかし、やはり何と言ってもこの映画の最大の魅力は若山富三郎ですね。ファーストカットで小林昭二と二人で歩道橋を歩いているだけで「映画」になっているのは、もう見事としか言いようがない。時代劇でも天才的な殺陣を見せるが、若山富三郎の超人的身体能力がなければこの映画の魅力は半減しているだろう。自分でそれをわかってやっているのだろうが、石橋蓮司をいじめる柔道のシーンなど、話の筋からは必要ないところではあるが観ていて楽しい。
ストーリーも破天荒だが、細かいところも結構笑える。主人公の名前が若山富三郎の本名の「奥山」だし、女房役の松尾嘉代の名前が「佳代」って!?そういう所はかなり大雑把で時代の大らかさを感じます^^
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