toumei

アスファルトのtoumeiのネタバレレビュー・内容・結末

アスファルト(2015年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

2人×3組が偶然出会うのだけど、どの2人組も知らず知らずのうちにお互いを補い合っているのがわかった。
人間関係っていう言葉を聞くと問題ばかりが思い浮かぶけど、人と人が関わるってことはそもそもそういう役割を果たすためだよね。
自分の足りない分を助けてもらって、相手の困っている分を自分の持つもので助けて。1人で生きていけない動物として作られてるのが人間なんだし。
最近関わると辛くなるような人が多くてうんざりしていたけど、人と関わることをもっとポジティブに捉え直してもいい、と言ってもらった感覚だった。

おばあちゃんとそこに不時着した宇宙飛行士の関係が特に好きだった。
言葉がわからなくてもお互いに「いい人みたいだな」と感じて、思いやり合って、伝えよう理解しようと色々な方法を試しながら共存している感じ、なのにぜんぜん無理はしてない感じ、がとてもよかった。
私自身 他言語圏の人の気持ちをより深く理解するために言語を学んできたし、意味があったと思っているけれど、彼らを見て「言葉なんてなくても、伝えようとする気持ちさえあれば大丈夫なのかもしれない」と思えた。それが嬉しかった。
同じ言語話者同士でも分かり合えないことばかりで、もっと言葉にしないとだめなのにって思ったりするけど、言葉云々より根幹はやっぱり「伝えよう」とか「理解しよう」とかそういう気持ちなんだな。
それが無かったら言語が同じでも伝わるわけがない。

女優と青年に関しては、苦しみながら下手くそながらも再度大舞台に挑戦しようとする女優に、青年がかけた言葉が印象的だった。かなり的確に背中を押す言葉だった。
-全然ダメ、うまくできない。セリフも覚えられないし、めちゃくちゃになる。
-間違えてもいい。
-私バカみたい?
-全然。君が動画を送らなかったって誰も気にしない。…1週間前初めて会って、映画を観ていい演技だと思った。君はいい役者だ。ゆっくり準備して、やるならいい演技を。今は演出家のことは忘れるんだ。


それにしても、時間の流れがせかせかしていない映画は居心地がいい。静かなのもいい。今はこういう映画をもっと観たいな。
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