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アスファルトのJのレビュー・感想・評価

アスファルト(2015年製作の映画)
4.2
・物語★★★
・配役★★★★★
・演出★★★★★
・映像★★★★
・音楽★★★★

独特でクセのある作品だけど、お気に入りの映画がまたひとつ増えた!

作品の細部にいたるまで、とにかくオシャレ。
狙って作り込まれたスタイリッシュさなどではなく、抑えても滲み出てきてしまうような、落ち着いていて上品かつ自然なシャレっ気が実にフランス映画らしい。

それでいて、極めてユーモラスでシュールな笑いが随所に散りばめられているから、何度となく客席が笑いに包まれていた。
ヘタなコメディよりもよっぽどオモシロイ‼︎

“映画”にオマージュを捧げる粋な演出も嬉しい。

“愛は、突然降ってくる”

ストーリーは、大きな起伏があるわけではなく、至ってフラットだ。
けれども、フラットな日常の中のほんの些細なきっかけで、多かれ少なかれ孤独を感じている登場人物たちが、少しずつ変わっていく姿は微笑ましい。

年齢や国籍を超えた心の交流は温かみにあふれ、小さいけれども確かな幸せが、スクリーンからこぼれてくるかのようだ。
そして、人が何かに懸命になる姿は、ときに不器用で滑稽だとしても、しっかりと観る者の心に響く。

キャストは殆ど存じ上げないが、皆いい味を出している。
凋落した女優“ジャンヌ・メイヤー”役のI・ユペールは、ベテランとは言えage60 overとは思えない。J・アイゼンバーグと共演する「母の残像」が楽しみだ。
2階のオッサン“スタンコビッチ”は、夢に出そうなくらい濃厚なキャラ!
セミロングのティーンの鍵っ子“シャルリ”は、絵に描いたようなイケメン。彼目当てで本作を観賞した女子も多いのでは…?と思いきや、S・ベンシェトリ監督の実の息子というから驚きだ!

灰色の曇天が印象的な映像にも派手さはない。
しかしセリフが極端に少ない分、まさに映像が物語を語っているかのようだ。
特に、飛び立つヘリを見送るジャンヌとシャルリそれぞれの姿を映す構図は、なんとも言えず詩的で美しかった。

音楽、というより“アノ音”は、それ自体があたかも一人のキャラクターのような存在感…!
その正体が明らかになるラストシーンの5秒間に、本作のテーマや雰囲気が凝縮されているかのようだった。

もう少し歳を重ねた頃に、是非ともまた観てみたい。


劇場用パンフ★★★★
全22ページ。
表紙のデザインは、作品同様にオシャレだ。
監督の意図がよく分かるインタビューには、思わず唸りたくなる。
フランスの“団地”にまつわる社会的背景にも触れたエッセイは、国際的かつ社会学的な知見をも深めてくれる。
一方で、巻末の“マダム・ハミダのおもてなしクスクスレシピ”など、遊びゴコロも満載。
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