おしりハートのねこ

冷たい熱帯魚のおしりハートのねこのレビュー・感想・評価

冷たい熱帯魚(2010年製作の映画)
4.2
とても怖い。女性蔑視、暴力。 

でんでんの演技がどこにでもいそうなのに凄く不快なおじさんを見事に表現しきっていて、恐ろしいとしかいいようがない。女を性的な商品とみなし、男は暴力でひれ伏せさせる。そしてそれを笑顔で大声で話す雰囲気でごまかして相手をあれよあれよと逃げられなくさせる。男らしさの極みだと思います。

〈2021.09.12再鑑賞〉
最近アクアリウムを始めたのでもう一度観てみました。水草とか見てるだけで心が和みます。

社本って思春期のグレた娘(未成年だがチンピラみたいな男と付き合っている)にも嫌われ、後妻にもセックスを断られ、会話もほぼなく…冷え切った家庭。そんな中でもちいさなアクアリウム店を営みながら、娘や妻に好かれて暖かい家庭を築くことを夢見ている、慎ましやか(?)でおとなしく見える男。
そんなところに突如、大きなペットショップを経営し、この地域で権力を持っていると見られる豪胆な男、村田が現れ、自分の娘も妻も、村田によって自分には見せない笑顔や活力を引き出されていく…。どんな気分だったんだろう。
 社本は村田を畏怖し、関係を切りたいと望みつつも一種のロールモデルだと思ったんだろうね。なんか自分が渇望するが手に入ってない全てをものにしてる人が現れたら、たとえその手段が暴力でも、『そうか、こうすればいいのか…!!』って思ってしまうだろうな……。なんかやるせないわ。

最初の解体のあと家に帰って裸の妻に抱きつくんだけどこのシーンは既視感。「おくりびと」でもこういうのあったな。

で、村田は本当に不愉快なハラスメントおじさんで、画面越しに観てるだけでも具合悪くなってくる。声のトーンとかデカさとかが、ナチュラルに人を威圧する力を持っている!でもこういう人本当にいるよね!

みつことかあんな知らないおじさんにベタベタ、ハグとかボディタッチされたら普通、嫌じゃないのか?なんでニコニコして嬉しそうに受け入れてるんだ。
妻も妻で、すぐ村田に服従するの、私はなんでなのかよくわかんなかった。しみったれた生活にも、パッとしない自分の旦那にもうんざりしていて、そんなところに金も権力も持ってて自分のことを理解してくれる人が現れたから…ってことかな。ちょっとこの辺に監督の「女って所詮こんなもんだろ」っていう価値観が出てるのかな〜笑

エロシーンが必要以上にあった気がするのは他の方がおっしゃってるのと同じ意見〜。

あとこの映画の男はなんでとにかく乳を鷲掴むの?まああれがすごい乱雑で下品な感じを出せてて良かったけど!

村田と妻が風呂場で歌ってるシーンめっちゃ笑った こいつら狂ってるわ
自分で殺したくせに「惜しい人をなくした!!」じゃないんだよ

『ヘルタースケルター』とも似てるなあと思った。ともに、究極の女らしさ/男らしさを獲得する過程で傷つき苦しみ狂いながらも強かに生きていく(社本は死んだけど)人たちの話だと、私は解釈している。

人生ってのはなぁ、痛いんだよぉ…!!

追記2
タイトルは何を表してるんだろう?
冷たい=死んだ、熱帯魚=…?
わかる方いらっしゃいましたら教えてください!!🙌