COZY922

冷たい熱帯魚のCOZY922のレビュー・感想・評価

冷たい熱帯魚(2010年製作の映画)
3.0
死体をさばきながらヘラヘラ笑う。「ボディを透明にするのが一番大事だ 」と言いながら切り刻んだ肉片を棄て骨を焼き人灰を撒く。埼玉愛犬家連続殺人事件をベースに製作された本作。脚色や設定変更はあるが「ボディを透明に・・」という言葉をはじめとする数々の言動は事実に忠実らしい。まさに”事実は小説よりも奇なり”。

狂気の沙汰、サイコパス、鬼畜。どんな言葉を使っても足りないレベルの凄まじさ。良心の呵責など微塵も無い人間のむせ返るような性と暴力と欲。特に後半はグロくて不快な場面の連続だが、演出や脚本は振り切れてるわ、内容が猟奇的過ぎて感覚が麻痺してしまうわで、何もかも超越したような平常心で鑑賞できた。そんな自分が怖くなった、、。

でんでんと吹越満の演技は傑出していた。強面でどこから見ても極悪人風情な輩よりも人の良さそうな笑みを浮かべた人が豹変する方が怖いし、おとなしそうな人間が凶暴化するのもまた然りだ。前半、社本があまりにも村田の言いなりで片棒を担がされる羽目になるのを見ていると、社本が最後 ぶち切れる様子を見てヘタすると爽快感を感じてしまいかねないが、これは監督の仕掛けたトラップなんだろうか?観客の心理を巧みに突いて弄ぶのが上手いと思った(皮肉ではなく褒め言葉)。

ただ、その過激な演出・映像はやはり観る人を選ぶし、内容的に気分が悪くなる人もいるだろう。好きな人もいれば嫌いな人もいるというのはどんな映画にも言えることだが、これほどスコア分布が散らばる映画もあまり多くない気がする。俳優陣の力演やエネルギーの放出量の大きさは一見の価値があるし観て後悔はしていないけれど、私はあまり好きになれず、2度は観たくない映画だ。
COZY922

COZY922