糸くず

ホワイトリリーの糸くずのレビュー・感想・評価

ホワイトリリー(2016年製作の映画)
3.5
陶芸家の師匠と弟子の共依存を描いた古典的なサイコスリラー。

映画では今時なかなか見かけない直球のサイコスリラーが観れたことはうれしい。しかし、この内容なら「ポルノ」はあくまで建前の純然たるサイコスリラーとして作ってほしかった。

ロマンポルノであることは、本来ならば「絡みさえあれば何でもあり」という自由であるはずが、この映画の場合、「絡みがなければならない」という足枷として働いているように思う。

序盤の花びらが舞い落ちる観念的なベッドシーンは美しいが、こうした美に力を注ぐよりは、はるか(飛鳥凛)と登紀子(山口香緒里)が共依存に至った背景を深めるべきではないか。特にはるかの過去が弱すぎる。「家にも学校にも居場所がなかった」からといって、赤の他人の家にそのまま引き取られるのはあまりにも不自然だ。二人の間に男が入ってからの展開は、痛めつけられるはるかの嫉妬と孤独が身に迫ってよいだけに惜しい。

クライマックスも、男の彼女が二度も乱入してくるので、拍子抜けしてしまうというか、我に帰ってしまって、屈辱で愛を試す狂気の熱が急に冷めてしまう。

脚本に三宅隆太と加藤淳也の『クロユリ団地』コンビ、撮影に近藤龍人と素晴らしいスタッフが揃っているだけに、いろいろもったいない。
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