いぶし銀髙橋

透明人間のいぶし銀髙橋のレビュー・感想・評価

透明人間(2019年製作の映画)
3.6
・冒頭
周囲を塀で囲まれた崖っぷちに建つ邸宅で、束縛夫によって半ば軟禁状態になっていた主人公。密かに逃亡の準備を進め、ある夜決行するが・・・

・雑記
この映画の肝はなんと言っても、全編を通してみられる不穏なカメラワークだ。誰の視点かも分からない意味深な映像が随所に挟まれるため、なんてことない日常のシーンでも、何かあるのではないかと思ってしまう。心が休まらないのだ。かといって全く緩急がないわけではなく、ほっこりするシーンもある。しかし分量は極々僅かで、次の瞬間には緊張状態に引き戻される。鑑賞者は常に緊張状態を強いられるのだ。
そして、こうした演出を際立たせているのが「音」だ。特に静寂の使い方が絶妙で、観ている側も思わず呼吸を忘れてしまう。自分も音を立ててはいけないと思わされるのだ。こういった演出は色々な映画で取り入れられているが、本作の場合はカメラワークと相まって何とも技巧的なものとなっている。
もう疲れたので書かないがその他にも、主人公が壊れていく様が丁寧に描かれている、ライティングの妙、といった語るべき点はまだまだある。さすがブラムハウスというべき、観る側の視点をよく研究し理解している作りになっていたと思う。