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オールド・ジョイのsanchangのレビュー・感想・評価

オールド・ジョイ(2006年製作の映画)
3.3
お腹に子供を抱えた奥さんを置いて、昔の友達カートと一泊二日のキャンプに出かけるマーク。物語はそんな2人がキャンプに行って、道に迷って、適当なところで寝て、翌日温泉に行って帰るというだけの話。事件らしきことは何も起きない。最初は監督が何を描きたかったのか分からなかったが、彼らの言葉を紡いでいくうちに少し見えてきた。

マリファナをふかしながら助手席で適当な道案内をするカート。彼は、自由奔放で、ガサツで、宇宙はしずく型であると主張するヒッピー的な人物。
一方、車の運転をし、妻からの電話には律儀に答え、父親になることが楽しみで、仕事のほかにコミュニティガーデンを作って地域に貢献しているマーク。

昔は仲が良かっただろうに、立場や境遇の違いから生じる2人の感覚のズレが絶妙なバランスで描かれる。地に足がつかないカートは、マークの地域貢献の話に露骨に不機嫌な態度をとるが、最終的には納得いかない顔をしながらも、君を誇りに思うと伝える。それに対して、君も何かに貢献できるよと伝えるマーク。絶妙に噛み合わない会話をしながら温泉を目指す2人。終始こんな2人の微妙な距離感の描写が続く。
そして、雄大というよりは日本にもありそうなありふれた自然と、示唆的に挿入されるラジオの政治的メッセージが、この映画の窮屈さと気まずさを助長しているように思える。

ラスト、不安定なカメラワークの中フラフラと街を彷徨うカート。ホームレスに小銭をせびられて一度は断るが、迷った末に小銭を渡して映画は終わる。マークとの交流を通じて、カートも最後、なにかに貢献したいと思ったのかもしれない。
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