ロングテイクの多用、対話の欠如、必要最低限の運動といった特徴がハリウッドの主流映画とは異なる遅さを表現するスロウシネマと呼ばれる潮流と関連づけられる
時折彼女からの電話は、旅の非日常性を遮断する効果的な役割
現実の問題に取り組むのではなく、左派の振る舞いという名目でしばしば内向的になる彼にライカートは自分を重ねている
アメリカの分断された政治的風景
ラジオを聴くことは当時のリベラル層にとって「何もせずにお手軽に何かしたつもりになれる」経験の典型例だったのではないか
妊娠後期で身動きの取れない女性を置いて身軽に出かける男性たち、というホモソーシャルな構図に身構えてしまうが、
カートからマークへと向かう矢印は徐々にマウンティングじみてくるのだ
カートはマークを見る時、彼にあって自分にないもの、安否を気遣ってくれる配偶者や帰るべき家社会人としての圧倒的なまともさを凝視しているように見える
現実に対処するという生き方を選んだのは君だ、俺は夢を見続けると
マーク寂しいよ、君と友達でいたいのに何か壁がある、と胸中を吐き出したカートにマークは引く反応を見せる
困ったような顔をし、表面的な言葉、何言ってる僕らは大丈夫だで取り繕うとする
相手は恥を承知でナイーブさを曝け出したのだから同意でも反論でも、いっそ拒絶でも、応えてやるのが誠実さだろう
しかしマークはカートのいう壁の存在を認めることすらせず、その場しのぎの態度ですべてを保留にしようとする
マークに反撃というつもりは恐らくない、だからこそカートにはダメージになる
マークのどこか被害者めいた態度に思い知らされる
一方マークは子どもの誕生という新たな喜びに向かって進んでいるが、同時に使い古した喜びに侵されつつある
社会から阻害された者同士が助け合い、そうでない人は見て見ぬふりをする
下高井戸各停だからパンフゆっくり読めて幸せだった