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ウインド・リバーのsheilaEのレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
4.0
ネィティブアメリカン居留地で起きた
レイプ事件を追うサスペンスもの。

ウィンドリバーと名づけられた
極寒の地。

冒頭でジェレミーレナーが息子に
「走るなよ」と声を掛けますが

そのときは転ぶからとか車にひかれるから
とかの一般的な親の注意と受け取ってましたが

2回目の鑑賞でわかりました。
走って冷たい外気を思い切り吸い込むと
肺気腫を起こして死ぬからだったんです。

こんなささいなやり取りにすら
彼らの壮絶な暮らしが表現されている。

冬になって一日に百回くらい
「さむいさむい」と言ってる自分…って。

レイプ事件の捜査と並行して
そもそもどうして彼らが

こんな厳しいところで
生きることになったのか。

そのモトを知り
考えさせられる映画。

子どものころ
インディアンといえば

焚き火を囲んで口に手を当てながら
踊っている。

西部劇ではカウボーイたちに殺されていた
彼ら。

大人になるにつれ
フロンティアスピリッツと自由の名の元に
辺境の地に追いやられた歴史を知った。

静かに暮らす彼らに現在も起こり続ける
悲劇。

事件の調査に
FBIから派遣された捜査員・ジェーンを
エリザベス・オルセンが演っていますが

どんぐりマナコで新人臭ぷんぷんの
彼女が派遣されたことで

彼らは「こんなのよこしやがって」と
諦めと怒りをあらわにします。
この辺のキャスティング、よかったです。

観る前はあの「おいたん」の妹かよ。
ダイジョブかなぁ?と心配でしたが

彼女の甘さと若さがいいインパクトを
与えてます。

ジェレミー・レナーのシュッとしてない
ずんぐりむっくり感もリアルでよかったし

被害者の父マーティン役ギル・バーミンガムの
悲しみと怒りを溜めた演技も最高。

こんな道を10kmも…とジェーンは嗚咽しますが
実話がモトということで
それを思うとやりきれない。

映画の中で
ジェレミー・レナーがマーティンの息子に
諭した言葉が悲しい。

やっぱり世界は変えられないんですかね。
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