Rita

田園に死すのRitaのレビュー・感想・評価

田園に死す(1974年製作の映画)
4.3
母殺しとエロスの真髄。

青森県の北端、恐山のふもとの寒村。父を亡くした少年は、母と2人で暮らしている。母との生活に嫌気を差した少年。そんなある日、村にやってきたサーカス団の団員から遠い町の話を聞いた少年は、隣家の憧れの女性に一緒に村を出ようと誘われる。

「母殺し」を題材とした寺山の幼少の頃を描いた半自伝的映画である。恐山、仏壇、柱時計、家出、性。学ランに顔を白塗りした十五の少年は東京グランギニョルを思わせる。サーカス団は丸尾末広の「少女椿」のようで私の好きな偏った日本文化が詰まった作品だ。

少年が駆け落ちする為、家出して村から逃げ出すまでの緊張感が半端ない。見てる私まで少年が無事に汽車に乗れるのかと不安になってしまう。

現実か幻か否や夢のような過去の私と現在の私の虚構。東京から戻ってきた女に童貞を奪われてしまう少年。しかし童貞の喪失を処女の喪失のように描かているのはどういう意味なのか。祭壇の前で犯されるって結構ホラーだし一番強烈だった。過去の美化ももはや寺山修司自身の実験映画に過ぎないのか。

少年を演じた高野浩幸は当時15歳。役と同い歳というのは凄い。学ラン、学生帽、顔の白塗り、薄らと赤い唇が堪らなく良い。高野浩幸の声、少し無邪気な仕草、空気女を膨らます場面で胸元はだけてるのとかわざとでしょ。エロスの塊やんか!と叫びたくなるほど性癖にぶっ刺さりまくりなのよ。喩えるなら濃いソースに着色料たっぷり混ぜ込んだ中に人間漬けたみたいな衝撃波。

何故、寺山は過去を虚構として映すのだろうか。母の息子への執着心が息子の心を縛っている。息子を自由にさせない母の呪縛は永遠だ。だから母を殺したかった。母を殺したら私はどうなるのか知りたい。家出したあの日から"現在の私"まで苦しめ続ける母の存在。やはり根本的なトラウマをどうこうしようというのは難しい。夫を亡くして息子と二人だけという虚無感が漂っている。それを踏まえて息子に向けた母の気持ちは、分からんでもないが何だか怖いものに見えてしまうんだなぁ。

私は寺山修司という人間が過去にどんな体験をしたのか、知りたいのです。しかし、寺山はこんな言葉を述べている。「ホントよりも、ウソの方が人間的真実である、というのが私の人生論である。なぜならホントは人間なしでも存在するが、ウソは人間なしでは、決して存在しないからである。」

この通り嘘の多い男で自分の胸の内を語ろうとしない人なのですよ。口からでてくることは嘘ばかり。知ろうにも知ることのできないお方。才能ある人間の考えていることは、私には到底理解に及ばない。彼を知ろうとすればするほど寺山修司という人間の沼にはまっていくようだ。

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初めての挨拶になりますが、いつもいいねや反応をして下さってありがとうございます!🙌
2022年最後の映画がこの作品になるとは思いもしませんでした。大晦日になんてものを見てしまったんだというのが正直な気持ちですが来年もたくさんの素敵な映画に出会えるのが楽しみです☺️
皆さま、来年もよろしくお願い致します🎍
Rita

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