Jion

田園に死すのJionのレビュー・感想・評価

田園に死す(1974年製作の映画)
4.5
超傑作。端的に言えば、トラウマ映画である。しかしそれは我々に精神的トラウマを与えるという意味においてではなく、寺山自身のトラウマティックな体験を描いた映画、というよりもはや"トラウマそのもの"であり、"無意識そのもの"である。母への愛憎、女たちへの愛憎は虚実の境界を失って入り混じり、そうして生まれる混沌とした無意識の世界は、人生=表層的物語の下で常に蠢き、脈動し続ける。トラウマを断ち切らんとて、断ち切るべき結び目がどこにあるかもわからない。無意識を構成する要素=過去の出来事の繋がりに必然性などなく、全ては偶然の集積であるのだから。
フラストレーションを芸術へ向けて昇華させようなんてのはほとんど嘘っぱちだと思っているが、しかしこの映画はまさしく、ある一人の天才の精神世界が昇華し美しい結晶と化した、類稀なる映画芸術だろう。
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