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カフェ・ソサエティのSnLのレビュー・感想・評価

カフェ・ソサエティ(2016年製作の映画)
3.7
開放的なハリウッドの人間関係に、比較的内閉したニューヨークのミニマルなコミュ二ティが対比されているのが面白い。

「あそこが〇〇の家だ」、「××を君に紹介しよう」と華やかではあるが自己主張の塊でしかないハリウッド・セレブの俗っぽさに背を向け、愛するニューヨークに戻るボビー。そこには血縁を中心とする濃密なユダヤコミュニティがある。ユダヤ人的なビジネスの才を活かして作り上げた「カフェ・ソサエティ」だが、その店のバックにつくのがギャングの兄であるというのにも、表と裏両方の世界に浸透した兄弟=ユダヤの同胞の隠喩が見られる。

こうしたユダヤのアイデンティティの描写は、この映画をいつも以上にアレンの自己像の投影として印象付ける。

ふたりのヴェロニカも、かたや敏腕映画プロデューサーの片腕、かたや市庁舎で働く女性という対比の中で描かれていて、登場時間は短いもののブレイク・ライブリーの素朴な演技が、見た目のゴージャスさとは裏腹に純粋かつ誠実なヴェロニカのミニマルな印象を補強していて好印象。

神経質な若者の身近な恋愛のもつれ、ニューヨークへの愛、ハリウッドへの冷たい視線、そして直接または間接に自分を映画に登場させるなど、毎度毎度旬の俳優を使いながらよくもブレずに同じ要素をちりばめた映画を作るなと思う。
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