みけ

愛を綴る女のみけのレビュー・感想・評価

愛を綴る女(2016年製作の映画)
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「愛していない」。相手へのそんな一言から、望まぬ結婚生活を始めた、愛に飢えた女性の物語。原題は「mal de pierres」で、作中で主人公がかかる病いでもある、「結石」の意味。
この「結石」が、「子供を産めない」という身体上の病であると共に、精神上の病をも表していることは言うまでもない。
愛を求めながらも愛し方を知らない女性が、愛を求めて人にすがる一方で、自ら孤独を作り上げていく姿は、『あるスキャンダルの覚え書き』に出てくるオールドミスに近しい。
マリオン・コティヤールが演じてもなお、一方的で独りよがりな愛で暴走する姿は、なんとも痛々しい。
ゆえに、例え彼女のフラストレーションを理解できても、ルイ・ガレル演じる将校との「ロマンス」は、どうしても空虚なハリボテで、ご都合主義に感じられるのである。
将校への彼女の愛は、情熱的であっても、一方的で、暴力的で、自分勝手である。本当に痛々しい。
しかしだからこそ、真実が明らかになったとき、観客もまた「愛」について考えさせられるのだ。
本作の最後に明らかになる、本当の愛の姿は、デヴィッド・リーン監督『逢い引き』のラストのような清々しい暖かさがある。
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