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垂直のままのspacegomiのレビュー・感想・評価

垂直のまま(2016年製作の映画)
4.4
この映画で描かれているのは、生命の誕生から老い、死であり、「多様性」といった言葉だけでは捉えきれない性の複雑さである。大写しにされる男性器や女性器からは、性よりもむしろ、生のイメージが喚起される。クィア作家として名の知れたギロディだが、本作では人間のセクシャリティの枠組みを超えて、もっとプリミティブな何かを捉えようとしているように見える.基本的に寓話性の強い舞台とプロットであるが、たとえば、一人の老人にとっての過激で崇高な死は、次の日の新聞記事一つであっさりと消費されてしまう。書けない脚本家レオは、そうした社会や共同体から常に距離を置こうともがいている。幻想的な森での療養のシーンでは自然への回帰を、狼と対峙するラストショットでは動物的なものへの回帰を示唆する。他者との関係性を構築すること、社会に帰属することの困難さを克明に描きつつ、それでも垂直のままに立つことを高らかに肯定する、力強い現代の神話。
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