しい茸

わたしは、ダニエル・ブレイクのしい茸のレビュー・感想・評価

5.0
「尊厳がなくなったら、終わりだ。」


本当にその通りだと思った。


心臓が悪くて仕事はドクターストップがかかっているのに、何故求職活動をしなければならないのか?
何故、手当てが貰えないのか???
何故???????

"働く気がない人"と、"働きたくても働けない人"を審査するのが仕事なんではないの?仕事をきちんとしていないのはどっち?
行政よりも、隣人、街の人の方が親切ってどういうこと?
あらゆる面で救済措置が無いってことは「あなたを見放しました」ってことと同義じゃないか…

遠い地から子どもを2人抱えて引っ越してきて、右も左も分からない若い母親ケイティ。
赤の他人なのにいつからか手を差し伸べるようになったダニエル。
フードバンクのシーンは、目を背けたくなるほどリアルで、
スーパーで出会った謎の男は闇フラグが立ちまくっていて、
子供たちとの触れ合いのシーンは涙が出るし、
不服申し立ての審判の日、ダンがトイレに立った瞬間、このあとどうなるかわかってしまい辛かった。

最初は、イギリスだしダニクレのもじりかと思ったこのタイトルだけど、とんでもなかった…

そして日本でもきっと同じようなこと起こってるんだろうなと思った。
市民もヤバいやつが一定数いるのは否定しない。日々会ってるからね
でも全てマニュアル通りに行く訳ないやん。
人には色んな事情があって、それを聴ける担当がついて、事情を鑑みて解決策を探っていくべきではないの?それでも解決しない時もあるけど、それを探ることすらしないのはどうなの?

日本はここまでオンライン化が進んでなくてまだ書類文化が残ってるけど、
ダンも周りの人をもうちょっと頼れば良かったのに…隣人とかPC得意そうなのに。

20歳くらいの時、初めて「誰も知らない」を観たときのような、とてもやるせない気持ちになった。

貧しさとは何か?
お金が無いことよりも、困っている目の前の人を救えない心のことではないのかな。
しい茸

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