Ryan

シエラネバダのRyanのレビュー・感想・評価

シエラネバダ(2016年製作の映画)
4.1
家族は小宇宙


ストーリー
亡くなった一家の主の法要で、親族がアパートに集まってくる。細かいトラブルが重なり物事は予定通りに進まない。歴史を巡る口論、厄介な叔父との押し問答、一向に到着しない神父、そして料理は冷めていく…。


監督 クリスティ・プイユ


2016年カンヌ映画祭コンペティション部門出品作品。

激しい出入りとエンドレスな議論とでカオスと化す狭いアパート内に、親族という巨大な小宇宙が浮き上がってくる様を驚異的なリアリズムで描き切る。

面白い。
尺が長く、ただずっと喋っているだけだが「これが演技なのか?」と驚くほど自然な演技と演出のクオリティが高い。
知性、ユーモア、忍耐強い技術で今作の目標を達成している。

3時間近く途方もない会話が続く。
映画を見ていると言うより"親族が集まった場"を見ている。
カメラは定点で長回しをしており、どこまでが台本にあってどこまでがアドリブなのか?そんなのを見るのも楽しい。
きっとハマらない人は始まって数分でダメだと気づけるだろうし、気になる人はもう少しもう少しと引き伸ばすうちにあっという間に終わるだろう。

小宇宙とはよく言ったもので、どんな話をしてもどこかで壁にぶつかる。
生きてる時代も年代も違うから。
政治の話をしても、家族の話をしても、亡き父の話をしても…。
これを悲しいと受け取るのかパワフルな家族と捉えるのかは観客次第。
だからこそラストは普遍的な終わり方なのだろう。

経験があるかわからないが、親族が集まる時「憂鬱だな」とか「楽しみ」な気持ちが人によって様々あるだろう。
この映画ではどの感情なのかは探していくうちに変な緊張感に変わる。
緊張かMAXに達した時にふいに訪れるしょうもない会話。
緊張の糸が切れたのか大爆笑してしまった。
それくらい"家族の会話がリアル"。
「聞きたくもない話だったのに、急にしょうもない話ってあるよな」をまさに体現している。

個人的にかなり好きなタイプの作品で主演の方の演技がとても良かった。
時間に余裕のある方は是非。
Ryan

Ryan